お守り帖 Story.0 わたしのお守り

前職は、半分向いてて、半分向いていない仕事だった。
経理の仕事は性に合ってて好きだったし、
こんな私でもお客さんに頼ってもらえたり、
安定はしていた。

休日は美味しいごはんも食べに行けるし、
旅行もライブも好きなだけ行ける。
遠出するのに特別気を遣う相手もいない。
特に不自由はない。

でも代わりに充足感もない。
ずっと「このままでいいのか」という思いがありながら、
行動に移せない自分がいた。

そんな時よく聞いていた曲があった。

私はいつでも自由だった。
両親にも不自由のない生活させてもらい、
習い事も好きなことをやらせてもらっていた。

だけど自分が本当に気になること、
好きなことには昔から手を出せないでいた。

私は自分と向き合うことが苦手だった。

人の言葉や視線に敏感で、
それを「怖い」と強く感じるようになってから、
自分のやりたいことも、人にどう思われるかを気にして生きていた。

失敗することが怖くて、
失敗すると自分の全てが否定される気がして、
失敗から逃げていた。


自分がやりたいことに、
誰の許しがいるわけでもない。
でも誰かに許されないと生きられない。

それは失敗した時に、
誰かの、何かのせいにしたいから。

誰かの、何かのせいではなく、
自分が選んだこと。

でもそれを認めると苦しいから、
できないことを環境のせいにしたり、言い訳を積み重ねて、
いつのまにか自分が求めるものとは程遠い場所に、
進んでしまっている。

それでもその曲は
「君は自由だから。」と
いきたい場所まで行けるようにと祈ってくれていた。

「わたしにはなれない」と勝手に諦めていた
デザイナーの道を選んだ。

自分が本当にやりたいことを後押ししてくれた、
わたしにとってのお守り。

過去も、今も、未来も、

この曲は厳しくも優しく、
私を見守ってくれている。